何故、僕はこんな風にしか彼らと接する事が出来なくなったのだろう?

「また会えて嬉しいよ」

 在り来たりの言葉に込める心なんて無くて。
 それなのに何処かで泣きそうになる自分が居る。
 彼らが僕を見る目は、いつからこんなものになったのだろう?
 僕はいつから彼らをこんな風に見るようになったのだろう?

 そんな自分に動揺してたからかもしれない。
 僕はそこに居た少年に冷たい声で告げた。

「……君は帰ってくれるかな?」

 キセキの世代ではない、いかにも弱そうな男。おそらくテツヤのチームメイトだろう。
 僕が冷たく言い放つと、彼は目に涙を溜めて小刻みに震えているようだった。

 どうやら脅えているらしい……と思ったのはほんの少しの事。
 僕の目は直ぐに彼の感情を捉えた。

 ……この状況で、笑っている?

 彼が笑いを堪えている事に気付いてしまった僕は、何がおかしいのかとまた当たりそうになったが、それを阻止したのが、火神大我とかいうテツヤの新しい光。
 結局彼に対する問いただしたい気持ちはどっかに消えかけて、僕はまあ……色々やらかしたのだと思う。

 あいつらが去る時、さっきの弱男と目があった。
 彼はこっちを見て何か言いたさげにするから、思わず僕は顔を顰めた。
 
 彼は笑って、そしてまたこっちを向く。

『あ』
『と』
『で』

 彼の唇が音も無く零したその言葉に、僕は眉をひそめる。
 ……あとで? 1回戦をチェックする程、誠凛に執着はしていないし、そもそもあいつはレギュラーですらないだろう。とりあえず、名前も知らない彼への僕の印象は、

 ――気に入らない

 ただそれだけだった。

                     
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。